年々、夏の暑さが辛くなってきています。そんな中、最も心配なのが熱中症です。熱中症は、対策や対処法を間違えれば、命の危険も。
今回は、整備士として個人でできる熱中症の対策方法、熱中症になってしまった時の応急手当の方法を、整備士の実体験を踏まえて紹介します!
この記事を書いたのは・・・
F.A(応急手当普及員資格所持) 学生時代、部活動中に熱中症の経験あり
インタビューに協力していただきました!
I.A(2級整備士 整備士経験5年) エンジンのシリンダー交換や、ミッションを分解しての作業が大好き。効率化と丁寧さを意識し、指定された時間より正確に早く作業を完了させるプロ。
熱中症の救急搬送数は年々増加傾向にあり、令和5年には91,467人と令和最多を更新しました。
令和6年も例年に比べて気温は上昇しており、更なる熱中症の搬送人数の増加が見込まれます。
中でも整備士は、工場内や屋外などで作業することが多く、夏場は特に高温多湿の環境で作業を行うことが多い職業です。
また、車両のエンジンや機械部品の作業が中心となる時、熱がこもりやすい環境で働くことも多いのが現状です。
そして整備士のトレードマークと言えば、安全性と機能性を備えたつなぎ。
しかし、安全を守るために長袖であることが多く、どうしても半袖の服に比べると熱がこもってしまいます。
そのため、整備士は他の業種以上に、熱中症対策を行っていく必要があるのです。
今回、実際に現場で整備士をされていたI.Aさんに、夏場の整備について取材を行いました!
Q.夏場の作業って実際どうですか?
本当に辛かったです。 私の働いていた工場は、室温が40度以上あって、毎日汗まみれでした(笑)
とくに洗車がきつかったです!炎天下で本当にきつかったです。
Q.熱中症対策って何をしていましたか?
水を積極的に飲むようにしていました。
毎日尋常じゃないくらい汗が出ていたので、これは水を飲まないと倒れるなと思っていたので意識的にめっちゃ飲んでいました。
Q.夏で思い出に残っているエピソードとかありますか?
1日につなぎを3枚変えていました(笑) 汗まみれで気持ち悪くなってしまうのと、お客様のシートを移動の時に汚さないために、定期的に交換しなければと。
洗濯がとても大変だったのを覚えています。
Q.職場で熱中症を感じたことや、仕事仲間が熱中症になったことってありますか?
僕自身はめっちゃ対策してたから熱中症にならなかったけど、整備に夢中になりすぎて水分補給を忘れて熱中症になった同期がいます。
その時は涼しい部屋で横にして、塩分チャージや水分補給をさせながら、保冷材で体を冷やしていました。
以上のインタビューからも分かるように、整備士にとって夏場の作業は過酷そのもの。
洗車など炎天下の作業となる場合は、特に熱中症対策を行わなければなりません。
それではまず、一般的に警告されている熱中症の症状について紹介します。
これらの症状を少しでも感じた場合は、必ず涼しく安全なところで休憩を行いましょう。
もし症状が悪化する場合は後述する応急手当を行い、必要に応じて救急車を呼びます。
では、なぜ自動車整備士の熱中症は特に注意が必要なのでしょうか。
それは、整備士の仕事の特徴と深く関連があります。
灼熱の温度の中行われる整備をはじめ、もともと整備士としての作業は、体に負担がかかりやすいもの。
ちょっとした体調の変化も、「疲れているのかな」と思いつつも頑張ってしまう人も多いのが実情。
しかし、いつもは大丈夫だった作業も、気温や湿度の変化で熱中症の危険性が生まれることが大いにあります。
そのため、一例にはなりますが、以下のようなことが起こった時には熱中症を疑いましょう。
熱中症は命を落とすだけでなく、後遺症が残ることも。
以前はできていた仕事ができなくなってしまった、ということを減らすためにも、後述する熱中症対策と応急手当の方法は必ずチェックして、覚えておきましょう!
周知の事実ですが、この2つは特に効果的であり、熱中症対策として代表的なものです。
整備を行っている途中に「何か体が変だな・・・」と思ったらすぐに休憩するのはもちろん、作業の途中で特に疲れていなくても、時間を計って定期的に水分を取るなどの休憩を行うことが大切です。
疲れたら休憩だけでなく、定期的な休憩や、区切りが良い時に水を飲んで少し体を冷やす、といった取り組みを行うことが大切です。
職場にスポットクーラーがある方はぜひそこで涼んで体力回復をしましょう。
また、水分補給の際は、塩分やミネラルを含む水を飲んだり、塩分チャージのタブレットを食べたりすることが効果的です。
整備場に飲料水とタブレットを置いてない場合は、明日から持って行ったり、置いたりするなどしましょう。
職場での対策だけでなく、日頃の食生活や睡眠時間を整えることも、熱中症対策としては効果的です。
3食しっかり食べる、睡眠時間も8時間を目標にしっかりとるなど、意識して可能な限り実践しましょう。
旬野菜や梅干しなどを積極的に摂るのも、対策としては有効です。
体の外からのアプローチで体温を下げることで、熱中症を予防します。体温を下げる方法は、
1.冷たいものを当てて、直接冷やす
2.水分で肌を濡らし、その水分が蒸発するときに熱を奪う気化熱で、体の熱をとる
の2種類が主です。具体的には以下の方法があります。
冷却タオルや冷却シートなどの冷たいものを直接肌にあて、冷やす方法も効果的です。
水分を含んでいることも多く、気化熱での冷却も期待できます。
濡らしたり凍らせたりすれば、再利用できるものもあるため、コスト的にも安く済むことも多いです。
定期的な冷やしなおしや、交換を行う必要はありますが、良い休憩のタイミングだと捉え、積極的に活用しましょう。
ボディーシートや冷感スプレーの中には、メントールと呼ばれる成分が入っているものがあります。
これは体を冷やすというより、「冷たいと感じさせる」といった効果によるもので、適切な使い方が必要になります。
1.ヒンヤリ感じても体はそんなに冷えていないといったことを念頭に置いて使用する。
2.休憩と水分補給はしっかり行う。
3.多用しすぎない
以上のことを意識して使うことで、体の不快感を取り除いてくれるので、どうしても暑くて苦しい時には
上記の対策と一緒に使ってみましょう。扇風機やうちわで風を送ることで、ヒンヤリ感がとても出ます。
空調服や速乾性の肌着を着るのも1つの手です。
つなぎにも機能性が高いものは出てきており、通気性をはじめとした多くの熱中症対策が施されているものもあります。
着る物での対策といったところも、1つ視野に入れてみてもいいかもしれません。
整備中に体調の異変を感じたら、以下のことを行いましょう。
軽度の場合でも、しっかり体を冷やして安静にすることが大切です。
整備士の場合つなぎを着ているため、簡単に脱ぐことができません。
そのため、つなぎにもよりますが、前のチャックを開けて解放して空気の流れをよくしましょう。
また、近くに車体や危険な工具が無い涼しいところに避難することも大切です。
これは倒れこんだ際に、整備中のクルマや部品と接触し、ケガをすることを抑制する為です。
この際の注意点として、体を冷やす目的でメントール入りの物を使わないようにしましょう。
前述したようにメントールは「冷たいと感じさせる」だけなので、冷却を行うという意味ではあまり効果がありません。
実際に熱中症になったときは体を冷やすことが最優先のため、氷などの冷たい物で実際に冷やす必要があります。
自力で歩くことができない、水分補給ができない場合はただちに119番通報し、医療機関を受診しましょう。
体を冷やすなどの対応は意識がある場合と同じですが、意識が朦朧としている時に無理に水分を飲ませるのは危険です。
しっかり体を冷やしながら、救急隊の到着を待ちましょう。
また、呼吸が止まってしまった時に心肺蘇生ができるよう、救命救急の講習を受けておくことも必要です。
参考
総務省消防庁 令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況
公益財団法人 東京防災救急協会 応急手当普及員講習テキスト ガイドライン2020
日本の車業界は、整備士の整備技術があってこそ。
いわば、整備の技術は日本の宝です。
しかし、熱中症にかかってしまうと、その日に作業ができなくなってしまうだけでなく、場合によっては入院や、後遺症、命の危険もあります。
今後の整備業務に支障をきたす可能性も。
整備士の技術は短期間で身につくものではありません。
だからこそ、熱中症の対策をしっかり行って、その技術を失わないようにしましょう。
整備士の仕事は、お客様の来店の時間や営業担当とのやり取りにより、時間に追われることも少なくありません。
しかし、十分な水分と塩分の補給や、適度な休憩をしっかりとることだけは忘れないでほしいと思います。
日本の宝である整備技術を失わないためにも、各整備場で応急手当の方法を共有し、万が一のために備えてほしいと思います。
また近年、空調設備の整った整備場が増えてきています。
シャッターやエアコンの導入を行い、快適な環境で整備ができる職場も。
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