文系新卒や異業種出身者が7割超!無資格・未経験者をエキスパートに育てる独自の経営戦略。 -業界の整備士不足を解決する人材育成モデルに迫る。
目次
- - 新卒・第二新卒を含め、未経験の見習い自動車整備士を積極的に採用されていますよね。なかなか他の整備工場ではやられていない取り組みだと思います。
- - その辺りのお考えを詳しく掘り下げてお聞きできましたら幸いです。ちなみに現在働かれている方ですと、実際に見習いで採用された方は何名程いらっしゃるのですか?
- - ほとんどの方がそうなのですね!想像以上の割合で驚きました。
- - ただ、未経験者を受け入れるとなると教育やサポート体制を整える必要がありますよね。そのあたりはいかがでしたか?
- - 同じと言いますと?
- - なるほど。そういう意味ではスタートラインは同じということですか?
- -企業様によっては、新しい試みとして見習い自動車整備士を受け入れるところも増えてきているように感じます。一方で、実際の現場としては受け入れ態勢が整っておらず、すぐ辞めてしまうというケースも多い印象です。フォロー体制についてお聞かせください。
- -育成文化が根付いていますね。
- -何か他社様と比べて独自の取り組みでしたり、特殊な育成モデルの仕組みを作られているのだと思っておりました。熊井社長のお話を伺うと、今の体制があたかも自然で当然の流れであるかのように感じますね。
- -業界全体として、自動車整備士という職業が持つネガティブなイメージと実情とのギャップを埋めていく必要がありそうですね。私共としても、その動きに貢献できるような取り組みを推進することが急務だと感じました。本日はありがとうございました。
前身となる運送会社の整備工場時代から、50年以上に渡って地域に密着した自動車整備業を営む株式会社ケミカルオート。
他業界・他業種からの求職者を積極的に採用しており、現在働く自動車整備士の実に7割以上が見習いから育成した人材だという。
「別に特別なことをしているつもりはありませんよ。」と語る熊井社長に、現在の採用体制に至った背景と教育体制についてお聞きしました。
- 新卒・第二新卒を含め、未経験の見習い自動車整備士を積極的に採用されていますよね。なかなか他の整備工場ではやられていない取り組みだと思います。
別に特別なことではないと思っていますよ。
もちろん実務経験が有れば即戦力になりますし、それを必須条件にした募集で上手くいっている企業様はそのままでいいと思います。
ある意味羨ましいですね(笑)。
ただ、実際に民間の整備工場がそういった人材ばかりをたくさん集められるかというとそうじゃありませんよね。
それに私からすれば、資格と経験は絶対ではないんです。
自動車整備士の資格自体は入社して年数を重ねれば取れるものですし。
取得のための費用や時間を会社で負担して、一人前になるまで育成すれば何も支障はないと思っています。
- その辺りのお考えを詳しく掘り下げてお聞きできましたら幸いです。ちなみに現在働かれている方ですと、実際に見習いで採用された方は何名程いらっしゃるのですか?
ほぼほぼそうですよ。
今は自動車整備士が20名ほど働いていますが、その内の15名は当社で初めてデビューした者です。
中には新卒で入社してから10年近くずっと別の事業部で働いていて、30歳を超えてから初めて整備に移った者もいます。
そんな彼も問題なく2級まで取得していますし、現在は検査員資格を取ろうと頑張っていますね。
- ほとんどの方がそうなのですね!想像以上の割合で驚きました。
四年制大学を出て入社している社員も多いんですよ。
文系で、学生時代はメカニックとは無縁だったって者ばかりです。
当社としても専門学校卒以外NGなんてことは全くありませんからね。
今の社会構造的にも、文系だから、理系だからって職業の選択肢を狭める必要はないと思っています。
営業職だってITエンジニアだって、何でもそう。どの職種でもPCは使いますし、計算だってしなきゃいけない。
おそらく大半の方がメカニックという職業の中身をよく知らずに、なんとなく自分とは違う分野の仕事っぽいかもと敬遠しているんじゃないかなと思います。
就活や転職のタイミングで色々な選択肢がある中で、自動車整備士という仕事がもっと一般的になってもいいんじゃないかなって思いますね。
- ただ、未経験者を受け入れるとなると教育やサポート体制を整える必要がありますよね。そのあたりはいかがでしたか?
それはもちろん、苦労はしますよね。
未経験者を育てるということは、ある意味その分のコストが発生する訳ですから。
会社としての生産力が上がるくらいに成長してもらうまでには、どうしたって3年は掛かります。
でもそれは仕方ないと考えました。
特に資格に関して言えば、持っていようがなかろうが、関係ないことが多くて。
それはどこの企業様でも同じだと思うんです。
- 同じと言いますと?
例えば自動車整備士という仕事を考えた場合、同じ新卒でも、整備学校を卒業された方と四年制大学出身の方とを比べると、前者の方がアドバンテージがありますよね。
機械や工具を常に触ってきた訳ですから、業務へのとっつきやすさが違います。
あとは元から自動車整備士を目指していた方と、もしかしたら就職活動で失敗して仕方なくなられた方とではモチベーションっていう部分でも最初は差があると思います。
でも、逆に言うと違いはその2つだけですよね。
整備学校出身だからといって、入社と同時にそこの職場に合った業務を完璧にこなせるかと言ったら、ほとんどの方がそうではないと思うんです。
結局、長年実務経験が有るような方以外は、専門だろうと大学だろうと、30歳を超えてから自動車整備士になる方であろうと、一人前になって活躍できるようになるのは3年後くらいなんです。
- なるほど。そういう意味ではスタートラインは同じということですか?
その通りです。だから、あとは企業側の受け入れ態勢だけですよね。
何が良くて何が悪いかだとか、正解不正解みたいなのは結局その企業次第だと思っています。
ただ、業界として人材不足は明らかなので、0ベースから人材を育てていくことは、今後視野に入れていかざるを得ないんじゃないかなとは思いますけどね。
日本も不景気ですし、その中で他業界・他業種にチャレンジしたいという方がいらっしゃるのであれば、当社としても積極的に採用していこうというスタンスです。
それに、実務経験が有る方でも長続きしない場合もあるんです。
資格も経験もあるのに続かない。その会社が自分に合う合わないは本当に人それぞれだと思います。
世の中に整備工場はたくさんありますが、その中身は全部違いますからね。
これに関しては他の業界も同じ。
だから資格と経験は絶対じゃないんです。
-企業様によっては、新しい試みとして見習い自動車整備士を受け入れるところも増えてきているように感じます。一方で、実際の現場としては受け入れ態勢が整っておらず、すぐ辞めてしまうというケースも多い印象です。フォロー体制についてお聞かせください。
多分、どこも忙しくて見習いの面倒を見る余裕が無いんでしょうね。
先輩社員も教えるのに時間がかかると手間ですし、ストレスもたまるんでしょう。
それで、入っても相手にしてもらえないといったところですかね。
でも当社としても、別に特別な取り組みをしているつもりはありませんよ。
整備体制としては、乗用車、トラック、一般整備の三班体制で、見習いの教育は各班長に任せています。
それこそ、班長の内の1名は無資格・未経験から新卒で入社した人間ですし、その辺りの理解があるんだと思います。
入社後は、まずは点検業務のような、ある種型にハマって反復でできる業務から覚えていただきます。
そこからだんだんと技術を磨いて一般整備へスキルアップしていただくイメージですね。
それと、当社の場合は乗用車から商用車まで色々な車が入庫してきますし、作業内容もバラバラです。
だからこそチェック体制はしっかりしていると思いますし、見習いで入って来た方が孤立せずに、一緒に業務に入って覚えることができているのかなと思います。
もちろん慣れるまでは多少業務スピードにダブつきが出てしまうのも事実です。
ただ、会社としてそのダブつきを無駄と捉えるかどうかですよね。
何歳になったって必ずミスや失敗はしますし、それは仕方が無いことです。
これに関しては同じことが起きないように、その都度フィードバックをして指導するのみです。
-育成文化が根付いていますね。
正直あんまり意識したことはなくて、自然とこういった体制になってきたというのが本音ですかね。
おそらく今後も、見習い自動車整備士の採用がメインになるんじゃないかなと思います。
他業界、他業種から入って来られる方には期待していますし、しっかり育てていきたいと思います。
-何か他社様と比べて独自の取り組みでしたり、特殊な育成モデルの仕組みを作られているのだと思っておりました。熊井社長のお話を伺うと、今の体制があたかも自然で当然の流れであるかのように感じますね。
自動車整備士の退職理由って、職人気質に合わない、指導が厳しい、人間関係が合わないみたいなものが多いですよね。
業界内外にそのイメージがついてしまっているとも感じます。
それに加えて、今の日本人は自動車整備も建築業も肉体労働という一括りにして、カテゴリー分けしたがる方も多いように感じます。
それぞれの業界、それぞれの分野の仕事を、その中身までしっかりと捉えて、想像力を働かせて考えられる方は少ないんじゃないかなと思っています。
自動車整備士という仕事についても、業務内容や待遇、実際の中身は会社によって全然違います。
これまで自動車整備士という職を全く考えていなかったという方で、実際に働き始めたら上手く馴染めたというようなケースも多いです。
自分自身の可能性を広げていただいて、思い切って挑戦してみていただきたいと思います。
当社としても、そういった方が活躍できる場所を今後も提供していきたいと考えております。
-業界全体として、自動車整備士という職業が持つネガティブなイメージと実情とのギャップを埋めていく必要がありそうですね。私共としても、その動きに貢献できるような取り組みを推進することが急務だと感じました。本日はありがとうございました。